結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
普段のルキとの違いに驚いて、ベルはアクアマリンの瞳をパチパチと瞬かせる。
そんなベルの事を眺めながら、コーヒーをゆっくり飲んだルキは、
「じゃあ今度、ベルのオススメの店でコーヒー奢ってよ」
とそう告げた。
「私のお気に入り……は、こんな高級店じゃないですよ? どっちかっていうとこじんまりした庶民的なお店で」
ルキには合わないのではと目を伏せたベルに、
「いいよ。行ってみたい」
ベルのオススメなら美味しいと思うしとルキは笑う。
そんな回答を寄越すルキに、ベルはただただ驚く。
この人は仕事以外でこんなにスマートに女性と付き合えるタイプだったろうかと考えて、ああ、自分は対象外かとベルは納得する。
婚約破棄申請書も記載済みの期間限定で目の前からいなくなる相手だから、ルキはきっと安心して付き合えるのだろう。
「じゃあ、今度奢ってあげます。店長の淹れるオリジナルブレンドがすっごく美味しくって、良い香りなんですよ」
徹夜明けとかすごくオススメとベルはお気に入りの店を紹介する。
そこは学生の頃から出入りしている超庶民的な馴染みの店だ。
「へぇ、それはとても楽しみだ」
「店長もすっごくかっこいいんですよ。私店長が目の前でコーヒー淹れてくれるの見るのが好きでいつもカウンターに座るの」
「……へぇ、店長かっこいいんだ」
ベルが楽しそうに口にする内容を静かに聞いていたルキは、ベルが店長がかっこいいと言った瞬間気持ちがざわついた。
この感情には覚えがある。アレは確かハルがベルの弟だと知らなかった時に、ベルが愛おしそうにハルの名前を口にした時に感じたのだ。
「……どんな人なの?」
ベルがかっこいいと思う相手の事を聞きたいような聞きたくないような自分でもよくわからない感情のまま、ルキはそう口にしていた。
「コーヒーがすごく好きで、お店持つためにガムシャラに頑張って色んな店渡り歩いたんだって言ってました。店長美人さんなんで店長目当ての男性のお客さんも多くて」
そんなルキの心情に気づくはずもないベルは聞かれるまま店長について話す。
「ん? 店長女性なの?」
「女の人ですよ?」
訝しげに聞き返したルキを見返したベルは、
「既婚者ですから安心してください。店長旦那さん一筋だから」
ルキ様自意識過剰、全員が全員ルキ様に好意を持つわけないでしょと揶揄うようにそう言った。
「いや、かっこいいって言ったから」
てっきり男だと思ったと言えずルキは言葉を濁す。
「え? だってカッコいいじゃないですか! 美味しいコーヒーを1人でも多くの人に飲んで欲しいって自分で店構えて、経営して成功してるし」
好きなことして生きていけるってすごいことですよ? とベルは店長かっこいいと憧れの眼差しを向ける。
「私も、そんな風になりたいな」
ぽつりとつぶやくベルは自分の夢に想いを馳せる。まだまだ足りない事だらけだが、いつかはキチンと形にしたい。
そんなベルを見ながら、
「ベルだって、十分かっこいいよ」
と、ルキは思わず見惚れそうになるくらい優しい笑顔を浮かべてそう言った。
「へ?」
呆気に取られるベルに、
「それに努力家だ」
ルキはそう評する。
「…………えっと、その……ありがとう、ございます」
ルキに面と向かって真っ直ぐそんな事を言われるなんて思っていなかったベルは、屋敷とは違うルキになんだか照れてしまい、髪を耳にかけ視線を外して小さく礼を述べた。
普段自分のことをやたらと揶揄ってくるベルが照れたような顔をして視線を外し、耳や首筋を紅く染めているのを認めたルキは、
(あと、たまにすごく可愛い)
と、言葉にせずに心の中でつぶやいた。
なんか、今日のルキ様は変だとベルは思う。女嫌いというか、女性不審気味なくせにエスコートは完璧で当たり前に手を取るし、扱いは紳士的で普段とはまるで違う。
まるで、本当にデートみたいだなんて思ったベルはいつもみたいに揶揄う事ができなくて、不覚にもときめきそうになったので、通常運転のルキを思い出し平静を取り戻した。
そんなベルの事を眺めながら、コーヒーをゆっくり飲んだルキは、
「じゃあ今度、ベルのオススメの店でコーヒー奢ってよ」
とそう告げた。
「私のお気に入り……は、こんな高級店じゃないですよ? どっちかっていうとこじんまりした庶民的なお店で」
ルキには合わないのではと目を伏せたベルに、
「いいよ。行ってみたい」
ベルのオススメなら美味しいと思うしとルキは笑う。
そんな回答を寄越すルキに、ベルはただただ驚く。
この人は仕事以外でこんなにスマートに女性と付き合えるタイプだったろうかと考えて、ああ、自分は対象外かとベルは納得する。
婚約破棄申請書も記載済みの期間限定で目の前からいなくなる相手だから、ルキはきっと安心して付き合えるのだろう。
「じゃあ、今度奢ってあげます。店長の淹れるオリジナルブレンドがすっごく美味しくって、良い香りなんですよ」
徹夜明けとかすごくオススメとベルはお気に入りの店を紹介する。
そこは学生の頃から出入りしている超庶民的な馴染みの店だ。
「へぇ、それはとても楽しみだ」
「店長もすっごくかっこいいんですよ。私店長が目の前でコーヒー淹れてくれるの見るのが好きでいつもカウンターに座るの」
「……へぇ、店長かっこいいんだ」
ベルが楽しそうに口にする内容を静かに聞いていたルキは、ベルが店長がかっこいいと言った瞬間気持ちがざわついた。
この感情には覚えがある。アレは確かハルがベルの弟だと知らなかった時に、ベルが愛おしそうにハルの名前を口にした時に感じたのだ。
「……どんな人なの?」
ベルがかっこいいと思う相手の事を聞きたいような聞きたくないような自分でもよくわからない感情のまま、ルキはそう口にしていた。
「コーヒーがすごく好きで、お店持つためにガムシャラに頑張って色んな店渡り歩いたんだって言ってました。店長美人さんなんで店長目当ての男性のお客さんも多くて」
そんなルキの心情に気づくはずもないベルは聞かれるまま店長について話す。
「ん? 店長女性なの?」
「女の人ですよ?」
訝しげに聞き返したルキを見返したベルは、
「既婚者ですから安心してください。店長旦那さん一筋だから」
ルキ様自意識過剰、全員が全員ルキ様に好意を持つわけないでしょと揶揄うようにそう言った。
「いや、かっこいいって言ったから」
てっきり男だと思ったと言えずルキは言葉を濁す。
「え? だってカッコいいじゃないですか! 美味しいコーヒーを1人でも多くの人に飲んで欲しいって自分で店構えて、経営して成功してるし」
好きなことして生きていけるってすごいことですよ? とベルは店長かっこいいと憧れの眼差しを向ける。
「私も、そんな風になりたいな」
ぽつりとつぶやくベルは自分の夢に想いを馳せる。まだまだ足りない事だらけだが、いつかはキチンと形にしたい。
そんなベルを見ながら、
「ベルだって、十分かっこいいよ」
と、ルキは思わず見惚れそうになるくらい優しい笑顔を浮かべてそう言った。
「へ?」
呆気に取られるベルに、
「それに努力家だ」
ルキはそう評する。
「…………えっと、その……ありがとう、ございます」
ルキに面と向かって真っ直ぐそんな事を言われるなんて思っていなかったベルは、屋敷とは違うルキになんだか照れてしまい、髪を耳にかけ視線を外して小さく礼を述べた。
普段自分のことをやたらと揶揄ってくるベルが照れたような顔をして視線を外し、耳や首筋を紅く染めているのを認めたルキは、
(あと、たまにすごく可愛い)
と、言葉にせずに心の中でつぶやいた。
なんか、今日のルキ様は変だとベルは思う。女嫌いというか、女性不審気味なくせにエスコートは完璧で当たり前に手を取るし、扱いは紳士的で普段とはまるで違う。
まるで、本当にデートみたいだなんて思ったベルはいつもみたいに揶揄う事ができなくて、不覚にもときめきそうになったので、通常運転のルキを思い出し平静を取り戻した。