結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「……ベル。俺も、楽しかったよ」
いつもとは違い、揶揄うことなく素直に褒める照れたようなベルの様子にルキは可愛いなと思いながら自然と表情を崩す。
「上手く、エスコートしてもらえなくてごめんなさい」
そんなルキを見ながら、ベルは反省するようにそう謝る。
「え?」
「いや、改めて思ったんです。本当に、ルキ様は天の上の人だなって」
ベルはそう言って私はどうやっても偽物の婚約者だなと苦笑する。
きっといつか現れる彼の隣にいる人は、カフェの値段を気にすることなく、プレゼントも笑顔で受け取れる可愛らしい人だろう。
「ふふ、ルキ様ならきっとすぐに素敵な上流階級のお嬢様とご縁がありますよ」
あなたなら大丈夫。そう言って屈託なく笑うベルを見ながら、ルキの気持ちはざわつく。
「ああ、そうだ。化粧品の香りについてですけど、私がつけてたのは今うちで開発中の化粧品で"恋せよ! 乙女プロジェクト"らしいですよ」
サンプル入ります? とベルは急に営業をはじめる。
「ほら、ルキ様影響力あるし。この化粧品の匂いは平気みたいだし。あれが広まったら、化粧品の匂いで酔うことなくなるかもですよ?」
そんな事を言うベルに、
「……個人的に投資しようかな」
とルキは苦笑する。
「ふふ、じゃあ将来奥様にでも買ってあげてください」
それまでに一般に普及するように頑張りますよーと宣言するベルを見ながら、驚きでルキは目を大きくする。
(奥様……? ああ、そうか。7ヶ月後にはもうベルは)
いないのだ。
来年、彼女の誕生日を祝うこともない。
「どうしました、ルキ様?」
不思議そうに見返してくるアクアマリンの瞳を見ながら、ルキは目を逸らしていた感情の正体を知る。
「鯛茶漬け、美味しいなぁって。けど、冷めてしまったな」
「本当ですね。また今度作りますね」
今日は材料ぎれなのでとベルは残りのお茶漬けを食べはじめる。
「……何回でも?」
「ふふ、そんなに気に入ったんですか? いいですよ。料理は嫌いじゃないので、別バージョンも作ってあげます」
庶民料理しかできませんけど、と笑うベルを見ながらルキは思う。
何回でも。
できたら来年も。
叶うならその先も。
ベルと一緒にごはんが食べたい。
「……やばいなぁ、勝ち筋が見えない」
「え? ルキ様が落とせない商談相手がいるんですか!? どんな案件!?」
仕事全振りのルキの交渉能力の高さを知っているベルは今後の参考に詳しくとワクワクと楽しそうな様子で、続きを強請る。
「ちょっと、難攻不落の案件があって」
詳細はまだ内緒とルキは笑う。
「進行中の案件は話せませんもんね。あ、じゃあ終わって話せるようになれば、攻略方法の立て方とプレゼンの仕方勉強させてください」
仕事の話だと食いつくベルを濃紺の瞳が優しく見つめる。
「それは、ぜひとも俺が知りたい」
さて、どうしようと首を傾げたルキは、ワクワクしますねと楽しそうな全く分かっていないアクアマリンの瞳を見ながら、とりあえずまだ時間はあるかと苦笑して、お茶漬けの残りを食べ切った。
いつもとは違い、揶揄うことなく素直に褒める照れたようなベルの様子にルキは可愛いなと思いながら自然と表情を崩す。
「上手く、エスコートしてもらえなくてごめんなさい」
そんなルキを見ながら、ベルは反省するようにそう謝る。
「え?」
「いや、改めて思ったんです。本当に、ルキ様は天の上の人だなって」
ベルはそう言って私はどうやっても偽物の婚約者だなと苦笑する。
きっといつか現れる彼の隣にいる人は、カフェの値段を気にすることなく、プレゼントも笑顔で受け取れる可愛らしい人だろう。
「ふふ、ルキ様ならきっとすぐに素敵な上流階級のお嬢様とご縁がありますよ」
あなたなら大丈夫。そう言って屈託なく笑うベルを見ながら、ルキの気持ちはざわつく。
「ああ、そうだ。化粧品の香りについてですけど、私がつけてたのは今うちで開発中の化粧品で"恋せよ! 乙女プロジェクト"らしいですよ」
サンプル入ります? とベルは急に営業をはじめる。
「ほら、ルキ様影響力あるし。この化粧品の匂いは平気みたいだし。あれが広まったら、化粧品の匂いで酔うことなくなるかもですよ?」
そんな事を言うベルに、
「……個人的に投資しようかな」
とルキは苦笑する。
「ふふ、じゃあ将来奥様にでも買ってあげてください」
それまでに一般に普及するように頑張りますよーと宣言するベルを見ながら、驚きでルキは目を大きくする。
(奥様……? ああ、そうか。7ヶ月後にはもうベルは)
いないのだ。
来年、彼女の誕生日を祝うこともない。
「どうしました、ルキ様?」
不思議そうに見返してくるアクアマリンの瞳を見ながら、ルキは目を逸らしていた感情の正体を知る。
「鯛茶漬け、美味しいなぁって。けど、冷めてしまったな」
「本当ですね。また今度作りますね」
今日は材料ぎれなのでとベルは残りのお茶漬けを食べはじめる。
「……何回でも?」
「ふふ、そんなに気に入ったんですか? いいですよ。料理は嫌いじゃないので、別バージョンも作ってあげます」
庶民料理しかできませんけど、と笑うベルを見ながらルキは思う。
何回でも。
できたら来年も。
叶うならその先も。
ベルと一緒にごはんが食べたい。
「……やばいなぁ、勝ち筋が見えない」
「え? ルキ様が落とせない商談相手がいるんですか!? どんな案件!?」
仕事全振りのルキの交渉能力の高さを知っているベルは今後の参考に詳しくとワクワクと楽しそうな様子で、続きを強請る。
「ちょっと、難攻不落の案件があって」
詳細はまだ内緒とルキは笑う。
「進行中の案件は話せませんもんね。あ、じゃあ終わって話せるようになれば、攻略方法の立て方とプレゼンの仕方勉強させてください」
仕事の話だと食いつくベルを濃紺の瞳が優しく見つめる。
「それは、ぜひとも俺が知りたい」
さて、どうしようと首を傾げたルキは、ワクワクしますねと楽しそうな全く分かっていないアクアマリンの瞳を見ながら、とりあえずまだ時間はあるかと苦笑して、お茶漬けの残りを食べ切った。