結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「……その子は商家の出身なの?」
「そうですよ。なので、いずれ家継がなきゃって思ってるとこもあるようで」
んーでもやっぱりうちに来て欲しいなぁとベルは唸る。
「一緒に仕事できたら楽しそうなんですよねぇ。真面目だし、懐っこくていい子だし、でも頑固で芯のあるところも好印象」
ベルがユランをべた褒めするのを聞きながら、ルキは面白くないとさっきまでとは違う心境で楽しそうなアクアマリンの瞳を見つめる。
『もし私が誰かと一緒に居ることを選ぶ日が来たら、きっとそれは利権の絡まない相手です』
例えば、一般市民とかと本契約をする時に言っていたベルの言葉を思い出し、ルキの気持ちはざらつく。
結婚に興味がないと言ったベルが、もし将来伴侶を選ぶならきっと彼女と共通の話題があって、同じ方向を向いて仕事に打ち込める相手なのかもしれない。
例えば、今ベルがべた褒めしている彼のような。
「……俺も、行っていい?」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
「えっ?」
驚いているベルのアクアマリンの瞳を見ながら、ルキは座っていた椅子から立ち上がる。
ルキはベルの座っている1人がけのソファのそばに来て左右の膝掛けに手をつくと、
「俺も行くから」
と今度ははっきりベルと視線を合わせてそう言った。
「……まぁ、学祭に行くのは別にルキ様の自由ですけど」
近い位置で有無を言わさないルキと視線が絡み、ベルは困惑を浮かべたままそう口にする。
「本当? 良かった」
ベルの答えに学祭なんて何年ぶりかなとそのまま表情を崩してふわっと笑うルキに、ベルは目を離せなくなる。
一体どうしたのかとベルが口を開くより早く、
「ねぇ、ベル! この前借りた小説の続きなんだけど」
とノックもせずにドアが開き、シルヴィアが顔を覗かせた。
声をかけたシルヴィアは2人を見てバサバサっと本を落とす。
「椅子ドン……2人はもうそんな仲なのね」
きゃーと顔を赤らめたシルヴィアは顔を覆いつつもしっかり指の間から2人を眺め、
「な、仲がいいのはいい事だけど! 鍵くらい閉めてくださる? もう! もう! お兄様ったらっ……」
大胆過ぎますわとシルヴィアは絶叫する。
「あーシル様、誤解……」
シルヴィアの登場で一気に冷静さを取り戻したベルはこの兄妹本当に面倒くさいと誤解を解こうとするが、
「ベル! 本の続きは今度でいいわっ。お邪魔しましたー」
気を利かせてシルヴィアは足早に去っていく。
「ねぇ、ベル。椅子ドンって何?」
シルヴィアの残した単語に疑問符を浮かべるルキにため息をついたベルは、
「とりあえず手を退けてくれます? あとルキ様はこの手の知識をつけるの禁止とします」
周りもルキ様本人も危険なので、とベルは強めにルキに念を押した。
「この、顔面兵器めっ」
チッと嫌そうな顔で舌打ちしたベルに、
「……とりあえず悪口だって事は理解した」
ルキは大人しく手を離す。
盛大にため息をついたベルはシルヴィアにせがまれるまま恋愛小説を横流しにするんじゃなかったと数日前の自分の行動を深く反省した。
「そうですよ。なので、いずれ家継がなきゃって思ってるとこもあるようで」
んーでもやっぱりうちに来て欲しいなぁとベルは唸る。
「一緒に仕事できたら楽しそうなんですよねぇ。真面目だし、懐っこくていい子だし、でも頑固で芯のあるところも好印象」
ベルがユランをべた褒めするのを聞きながら、ルキは面白くないとさっきまでとは違う心境で楽しそうなアクアマリンの瞳を見つめる。
『もし私が誰かと一緒に居ることを選ぶ日が来たら、きっとそれは利権の絡まない相手です』
例えば、一般市民とかと本契約をする時に言っていたベルの言葉を思い出し、ルキの気持ちはざらつく。
結婚に興味がないと言ったベルが、もし将来伴侶を選ぶならきっと彼女と共通の話題があって、同じ方向を向いて仕事に打ち込める相手なのかもしれない。
例えば、今ベルがべた褒めしている彼のような。
「……俺も、行っていい?」
考えるよりも先に言葉が出ていた。
「えっ?」
驚いているベルのアクアマリンの瞳を見ながら、ルキは座っていた椅子から立ち上がる。
ルキはベルの座っている1人がけのソファのそばに来て左右の膝掛けに手をつくと、
「俺も行くから」
と今度ははっきりベルと視線を合わせてそう言った。
「……まぁ、学祭に行くのは別にルキ様の自由ですけど」
近い位置で有無を言わさないルキと視線が絡み、ベルは困惑を浮かべたままそう口にする。
「本当? 良かった」
ベルの答えに学祭なんて何年ぶりかなとそのまま表情を崩してふわっと笑うルキに、ベルは目を離せなくなる。
一体どうしたのかとベルが口を開くより早く、
「ねぇ、ベル! この前借りた小説の続きなんだけど」
とノックもせずにドアが開き、シルヴィアが顔を覗かせた。
声をかけたシルヴィアは2人を見てバサバサっと本を落とす。
「椅子ドン……2人はもうそんな仲なのね」
きゃーと顔を赤らめたシルヴィアは顔を覆いつつもしっかり指の間から2人を眺め、
「な、仲がいいのはいい事だけど! 鍵くらい閉めてくださる? もう! もう! お兄様ったらっ……」
大胆過ぎますわとシルヴィアは絶叫する。
「あーシル様、誤解……」
シルヴィアの登場で一気に冷静さを取り戻したベルはこの兄妹本当に面倒くさいと誤解を解こうとするが、
「ベル! 本の続きは今度でいいわっ。お邪魔しましたー」
気を利かせてシルヴィアは足早に去っていく。
「ねぇ、ベル。椅子ドンって何?」
シルヴィアの残した単語に疑問符を浮かべるルキにため息をついたベルは、
「とりあえず手を退けてくれます? あとルキ様はこの手の知識をつけるの禁止とします」
周りもルキ様本人も危険なので、とベルは強めにルキに念を押した。
「この、顔面兵器めっ」
チッと嫌そうな顔で舌打ちしたベルに、
「……とりあえず悪口だって事は理解した」
ルキは大人しく手を離す。
盛大にため息をついたベルはシルヴィアにせがまれるまま恋愛小説を横流しにするんじゃなかったと数日前の自分の行動を深く反省した。