結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
「ルキ様、私が5ヶ月後にいなくなるのは変えられない確定事項です。私は公爵家があなたのために用意した偽物の婚約者だから」
言葉が切れたタイミングでベルは優しく、でもはっきりとそう告げる。
「私が公爵家に嫁ぐ事はありませんし、あなたは遠くない将来にあなたの身分に相応しい一緒に生きていける誰かを選ぶ事になります」
「そう、だね」
それは、あのお見合いの日から変わっていないいつか訪れるだろう未来の話。
「で、ひとつ提案なのですが、先がない関係だ、と割り切れるなら私とお付き合いしてみます?」
真似事ですけどとベルはルキに提案する。
「要するに、ルキ様は"愛してる"が分からなくて、自分が誰かを"愛せるか"不安なんですよね? なので、擬似体験してみたら何か掴めるかもしれませんよ?」
私にも恋だの愛だののラベリングができないから上手く相手できるか不安しかないですけどとベルに言われ、
「待って、本当に待って。色々おかしい。とりあえず、ベルの思考がおかしいって事だけは分かる」
ついていけないルキは待ったをかける。
「だってうだうだ悩んだところで結論なんてでないでしょ? 悩むくらいなら行動あるのみ!」
じゃないと結果出てこなくない? と首を傾げたベルは、
「かもしれない、を確かめる検証実験としてとりあえずお試しで付き合ってみる事の一体何が問題なんです?」
とルキに尋ねる。
「ベルが男前過ぎる」
「え? そんな褒められても」
「無駄にポジティブ」
ミリも褒めてないっ! と全否定したルキは、展開が急過ぎてついていけない上に、ベル相手に悩んでいた事が馬鹿らしくなる。
「どこまでやるかは要相談って事で、都度都度決めるとして。あ、私さすがに婚前交渉はしないから」
それはお互いのためにNGでとベルはお付き合いの条件を提示する。
「で、どうします? 付き合います? やめときます? ルキ様が思い悩んで眠れないなんて状況が改善するなら私はどっちでもいいです」
にこにこにこにこと笑うベルを見ながら、ルキはしばらく悩んだあと、
「……じゃあ、付き合ってみる」
ベルに振り回される事を選択した。
「ふふ、じゃあ改めてあと少しの間ですけどよろしくお願いしますね、ルキ様」
楽しそうなアクアマリンの瞳はそう言うとトントンっとベッドを叩く。
「恋人なら夜遅くまで部屋にいても問題ないでしょうし、悪夢を見ないように、今日は寝るまで側にいてあげますから、ゆっくりおやすみください」
そう言ったベルは横になったルキを布団の上からトントン叩く。
「これは、恋人っていうより子どもの寝かしつけじゃないだろうか?」
「あれ? 添い寝希望ですか?」
「なっ、嫁入り前の女の子が何言ってるかな!?」
「まぁ、嫁には行かないから問題ないんだけど、ルキ様動揺し過ぎ。可愛いのー」
クスクスと揶揄うように笑ったベルは、布団を叩く代わりに手を差し出す。
「じゃあ、手を握ってます。あなたが眠るまで」
ルキはベルの優しい色味の瞳を見て微かに笑ったあと彼女の手を取る。
ベルはルキの手を握り返して、そっとルキのプラチナブロンドの髪を撫で子守唄を口ずさむ。
やっぱり子どもと勘違いしてないか、と苦笑しながら目を閉じたルキは、ベルの口ずさむ歌声にとても安心してしまいすぐに眠りに落ちた。
その日悪夢にうなされる事なく、久しぶりに熟睡できたルキが、実はアロマポットを焚いたあたりから眠かったベルがルキより早く寝てしまい、ベッド横で寝落ちしているのを発見するのは数時間後のお話。
言葉が切れたタイミングでベルは優しく、でもはっきりとそう告げる。
「私が公爵家に嫁ぐ事はありませんし、あなたは遠くない将来にあなたの身分に相応しい一緒に生きていける誰かを選ぶ事になります」
「そう、だね」
それは、あのお見合いの日から変わっていないいつか訪れるだろう未来の話。
「で、ひとつ提案なのですが、先がない関係だ、と割り切れるなら私とお付き合いしてみます?」
真似事ですけどとベルはルキに提案する。
「要するに、ルキ様は"愛してる"が分からなくて、自分が誰かを"愛せるか"不安なんですよね? なので、擬似体験してみたら何か掴めるかもしれませんよ?」
私にも恋だの愛だののラベリングができないから上手く相手できるか不安しかないですけどとベルに言われ、
「待って、本当に待って。色々おかしい。とりあえず、ベルの思考がおかしいって事だけは分かる」
ついていけないルキは待ったをかける。
「だってうだうだ悩んだところで結論なんてでないでしょ? 悩むくらいなら行動あるのみ!」
じゃないと結果出てこなくない? と首を傾げたベルは、
「かもしれない、を確かめる検証実験としてとりあえずお試しで付き合ってみる事の一体何が問題なんです?」
とルキに尋ねる。
「ベルが男前過ぎる」
「え? そんな褒められても」
「無駄にポジティブ」
ミリも褒めてないっ! と全否定したルキは、展開が急過ぎてついていけない上に、ベル相手に悩んでいた事が馬鹿らしくなる。
「どこまでやるかは要相談って事で、都度都度決めるとして。あ、私さすがに婚前交渉はしないから」
それはお互いのためにNGでとベルはお付き合いの条件を提示する。
「で、どうします? 付き合います? やめときます? ルキ様が思い悩んで眠れないなんて状況が改善するなら私はどっちでもいいです」
にこにこにこにこと笑うベルを見ながら、ルキはしばらく悩んだあと、
「……じゃあ、付き合ってみる」
ベルに振り回される事を選択した。
「ふふ、じゃあ改めてあと少しの間ですけどよろしくお願いしますね、ルキ様」
楽しそうなアクアマリンの瞳はそう言うとトントンっとベッドを叩く。
「恋人なら夜遅くまで部屋にいても問題ないでしょうし、悪夢を見ないように、今日は寝るまで側にいてあげますから、ゆっくりおやすみください」
そう言ったベルは横になったルキを布団の上からトントン叩く。
「これは、恋人っていうより子どもの寝かしつけじゃないだろうか?」
「あれ? 添い寝希望ですか?」
「なっ、嫁入り前の女の子が何言ってるかな!?」
「まぁ、嫁には行かないから問題ないんだけど、ルキ様動揺し過ぎ。可愛いのー」
クスクスと揶揄うように笑ったベルは、布団を叩く代わりに手を差し出す。
「じゃあ、手を握ってます。あなたが眠るまで」
ルキはベルの優しい色味の瞳を見て微かに笑ったあと彼女の手を取る。
ベルはルキの手を握り返して、そっとルキのプラチナブロンドの髪を撫で子守唄を口ずさむ。
やっぱり子どもと勘違いしてないか、と苦笑しながら目を閉じたルキは、ベルの口ずさむ歌声にとても安心してしまいすぐに眠りに落ちた。
その日悪夢にうなされる事なく、久しぶりに熟睡できたルキが、実はアロマポットを焚いたあたりから眠かったベルがルキより早く寝てしまい、ベッド横で寝落ちしているのを発見するのは数時間後のお話。