結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
その12、伯爵令嬢とお付き合い。
前回のおさらい。
とりあえず付き合ってみる事になりました。
ルキがグダグダ悩んでいたので勢いで付き合ってみることにしたのはいいのだが、正しいお付き合い、かつ健全でお別れ前提の関係とは一体何をすればいいのだろうか? とベルは悩んでいた。
そもそもベル自身今まで"恋愛"というものをやって来たことがない。生まれてこの方20年。彼氏いない歴史=年齢。なんなら初恋もまだだ。
その事に対して特別思い悩む事はなかったのだが、ルキと一緒に"愛してる"とはなんぞやという不確かなものについて考えると約束した以上とりあえず情報がいるだろう。
分からない者同士で悩んだところで、分からない+分からないはどこまで行っても分からない! というわけで、分かっている人に経験談を聞くべくベルは久しぶりに実家に帰って来た。
「ベル、ただいま帰還しましたー」
突然帰って来たベルを、
「あら、おかえりなさいベルさん」
当たり前のように出迎えてくれたのは、現伯爵夫人で義姉のベロニカだ。
気まぐれに会社に顔を出すベロニカが最近何故か職場に来なかったので、会うのは本当に久しぶりなのだが、相変わらず義姉は美しい。
月の光ような柔らかく優しい銀色の髪と猫のような金色の瞳。どこかの国のお姫様だと言われても信じてしまいそうなこの人を兄は一体どうやって口説き落としたのか。
じーっとベルが見ていると、ふふっと笑ったベロニカがベルを抱きしめる。
「ふふ、ベルさんがお家に帰って来てくれて嬉しいです。今日はお泊まりしていきますか? なんならずっーーーーとうちに居ていいですよ!」
ベルさんに会えなくて寂しかったですと言うベロニカにきゅんとトキメキ、コレで6コも年上だなんて信じられないわとベルはベロニカを抱きしめ返す。
と、ここで初めてベルは違和感を覚える。
「なんか……お義姉様の抱き心地が違う?」
ベルがそう言ったと同時に部屋の奥からやってきたストラル伯爵家現当主である兄のキースがベリっとベルをベロニカから引き剥がす。
「ベル、不用意に妊婦に抱きつくな。あと、ベロニカもこんな寒いとこにいたらダメだろ」
「伯爵。まだ全然寒くないですし、玄関でお出迎えしたくらいで身体冷えませんから」
本当に過保護ですねぇと言ったベロニカは、それよりもと伯爵の服を掴んで、
「もう! 何で伯爵が言っちゃうんですか!!」
今からサプライズしようと思って準備してたのに〜〜と、やたらと手の込んだ手製のポップボードを片手に抗議する。
「ベロニカ、そういうのに労力かけなくていいから」
あと、絵が壊滅的過ぎてコレ何描いてあるか分かんないんだけどと伯爵は呆れたようにポップボードを取り上げると、
「ミニ伯爵が現れたーって、何? これはスライムかなんか? 分裂すんの?」
と伯爵は率直に感想を述べる。
「あーまたそうやってヒトが作ったものに文句つける! じゃあ伯爵が作ってくださいよ」
伯爵似の男の子だったらいいなっていう私の願望です、と言いながらベロニカは肩を震わせて笑う伯爵に抗議する。
「いや、コレ必要?」
普通に家族が増えますで良くない? とベロニカのポップボードを見ながら伯爵はなお笑い続ける。
「遊び心はいつだって必要なんですっ」
ぷくっと頬を膨らませたベロニカは、分かってないなぁと伯爵に向かってそう言い切った。
「まぁ遊び心はともかく、本当に無理しないで欲しいんだけど」
「伯爵は過保護過ぎるんですよー。あれもダメこれもダメじゃストレス溜まってお腹の子にも良くないですよ」
「いやいやいやいや。よく分からないキノコ取ってきたり、よく分からない薬生成したり、よく分からない実験し出したら妊娠中じゃなくても止めるに決まってんだろうが」
とりあえずひとりでふらふら遠出するのやめてくれる? と伯爵は心配そうにベロニカを止める。
「コレが所謂マタニティハイって奴ですね!」
「いや、ベロニカの場合通常運転だから」
いつになったら落ち着いてくれるんだかと、ため息交じりに伯爵はそう言った。
とりあえず付き合ってみる事になりました。
ルキがグダグダ悩んでいたので勢いで付き合ってみることにしたのはいいのだが、正しいお付き合い、かつ健全でお別れ前提の関係とは一体何をすればいいのだろうか? とベルは悩んでいた。
そもそもベル自身今まで"恋愛"というものをやって来たことがない。生まれてこの方20年。彼氏いない歴史=年齢。なんなら初恋もまだだ。
その事に対して特別思い悩む事はなかったのだが、ルキと一緒に"愛してる"とはなんぞやという不確かなものについて考えると約束した以上とりあえず情報がいるだろう。
分からない者同士で悩んだところで、分からない+分からないはどこまで行っても分からない! というわけで、分かっている人に経験談を聞くべくベルは久しぶりに実家に帰って来た。
「ベル、ただいま帰還しましたー」
突然帰って来たベルを、
「あら、おかえりなさいベルさん」
当たり前のように出迎えてくれたのは、現伯爵夫人で義姉のベロニカだ。
気まぐれに会社に顔を出すベロニカが最近何故か職場に来なかったので、会うのは本当に久しぶりなのだが、相変わらず義姉は美しい。
月の光ような柔らかく優しい銀色の髪と猫のような金色の瞳。どこかの国のお姫様だと言われても信じてしまいそうなこの人を兄は一体どうやって口説き落としたのか。
じーっとベルが見ていると、ふふっと笑ったベロニカがベルを抱きしめる。
「ふふ、ベルさんがお家に帰って来てくれて嬉しいです。今日はお泊まりしていきますか? なんならずっーーーーとうちに居ていいですよ!」
ベルさんに会えなくて寂しかったですと言うベロニカにきゅんとトキメキ、コレで6コも年上だなんて信じられないわとベルはベロニカを抱きしめ返す。
と、ここで初めてベルは違和感を覚える。
「なんか……お義姉様の抱き心地が違う?」
ベルがそう言ったと同時に部屋の奥からやってきたストラル伯爵家現当主である兄のキースがベリっとベルをベロニカから引き剥がす。
「ベル、不用意に妊婦に抱きつくな。あと、ベロニカもこんな寒いとこにいたらダメだろ」
「伯爵。まだ全然寒くないですし、玄関でお出迎えしたくらいで身体冷えませんから」
本当に過保護ですねぇと言ったベロニカは、それよりもと伯爵の服を掴んで、
「もう! 何で伯爵が言っちゃうんですか!!」
今からサプライズしようと思って準備してたのに〜〜と、やたらと手の込んだ手製のポップボードを片手に抗議する。
「ベロニカ、そういうのに労力かけなくていいから」
あと、絵が壊滅的過ぎてコレ何描いてあるか分かんないんだけどと伯爵は呆れたようにポップボードを取り上げると、
「ミニ伯爵が現れたーって、何? これはスライムかなんか? 分裂すんの?」
と伯爵は率直に感想を述べる。
「あーまたそうやってヒトが作ったものに文句つける! じゃあ伯爵が作ってくださいよ」
伯爵似の男の子だったらいいなっていう私の願望です、と言いながらベロニカは肩を震わせて笑う伯爵に抗議する。
「いや、コレ必要?」
普通に家族が増えますで良くない? とベロニカのポップボードを見ながら伯爵はなお笑い続ける。
「遊び心はいつだって必要なんですっ」
ぷくっと頬を膨らませたベロニカは、分かってないなぁと伯爵に向かってそう言い切った。
「まぁ遊び心はともかく、本当に無理しないで欲しいんだけど」
「伯爵は過保護過ぎるんですよー。あれもダメこれもダメじゃストレス溜まってお腹の子にも良くないですよ」
「いやいやいやいや。よく分からないキノコ取ってきたり、よく分からない薬生成したり、よく分からない実験し出したら妊娠中じゃなくても止めるに決まってんだろうが」
とりあえずひとりでふらふら遠出するのやめてくれる? と伯爵は心配そうにベロニカを止める。
「コレが所謂マタニティハイって奴ですね!」
「いや、ベロニカの場合通常運転だから」
いつになったら落ち着いてくれるんだかと、ため息交じりに伯爵はそう言った。