侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「じゃあ、侯爵閣下に許可をもらわないとね」

 それを肯定と受け取ることにした。

 その夕方、さっそく侯爵にお願いするチャンスがめぐってきた。
 厨房に手伝いに行こうと階段を降りていると、彼がちょうどでかけるところにでくわしたのである。

「侯爵閣下、あの、いま少しだけよろしいでしょうか?」
「急いでいる。夕食の約束があるんだ。はやくしてくれ」

 執事のバートが側にいる為、彼は一応立ち止まってくれた。

 夕食の約束の相手は、彼が付き合っているレディの一人であることはいうまでもない。

 ズキンと胸の辺りに鈍い痛みが走った。
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