侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「お急ぎのところ申し訳ございません。じつはアールと、いえ、『アージェント・ルプス』と王立公園にお散歩に行きたいのです。よろしいでしょうか?」
「よろしいもなにも、おれはきみをこの屋敷に縛りつけているわけではない。公園でも劇場でも好きなところに行けるはずだ。そんなくだらないことで貴重な時間を費やしてもらっては困るな」
「だ、旦那様……」

 なんとなく予想をしていたので、彼の鋭く厳しい返答はわたしを傷つけることはなかった。返答してくれたらよしとしなければ、と思っていた。

 だけど、執事のバートはそうはとらなかった。慌てふためいている。

 わたしを気遣ってのこと。気の毒になってしまう。
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