侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「たしかに、マッサージとはいえ夫でもない男性に体を触れさせたのはわたしの落ち度です。はしたないというのもおっしゃる通りです。ですが、走ることは関係ありません。健康の為、体力をつける為、走っているのです。それが『女のくせに』というわけですか? 昨今、レディだって運動をします。いいえ。昨今でなくても、乗馬や球技は貴族のレディの嗜みですし、実際にそれらを趣味にしていらっしゃる方もいらっしゃいます。王立公園には、階級を問わずに多くのレディが好きな運動をして汗を流したりストレスを解消しています。軍にだってレディはいらっしゃいますよね? 大昔は男性ばかりだった軍も、いまは多くのレディがこの国を守っていらっしゃいます。彼女たちは、男性同様厳しい訓練を行っているのではないですか?」

 息継ぎをするのも忘れ、小さくて若いわたしが大きくてずっと年長の彼に詰めよっていた。

 しかも、半狂乱状態で。

 叫びながら、自分で驚いた。

 このわたしが、こんなにだれかに叫んだり責めたり出来るんだ、と。
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