侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

目撃

「あー、もう。雨が降り始めたわね」

 人通りのない閑静な馬車道の脇を通りながら、空を見上げた。

 雨雲がはてしなく広がっている。

「アール、付き合わせてごめんなさいね」

 一番信頼出来る友人に謝らずにはいられない。

「寒いわね」

 雨脚は徐々に強くなってきている。しかも、気温が急激に下がっている気がする。

 カーディガンではなく、もっと分厚い上着にすればよかった。

 とはいえ、もともとちゃんとした上着は持っていないのだけれど。

「アール、どこかで雨宿りしましょう。二人とも、風邪をひいてしまうわ」

 アールに提案したものの、銅貨の一枚も持って来ていない。それに、行く当てもない。
< 34 / 68 >

この作品をシェア

pagetop