侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「体を乾かさないとね。ここ、どこかしら?」

 周囲を見まわすと、これまで見たことのない景色が広がっている。

 人の通りが多く、ごちゃごちゃしている。通りの両側には、食堂や飲み屋さんかしら? そういうお店が並んでいる。

 道行く人は、狼みたいなアールとあきらかに場違いな恰好と雰囲気のわたしに目もくれない。連れの異性と怒鳴り合ったり笑い合いながら通りすぎてゆく。

 小説に出てくるような、ちょっと怪しげなところかしら?

 そう思うことにした。

 すぐ近くに果物を並べている屋台があることに気がついた。老婆が木箱にボーッと座っているので、彼女にここがどこか尋ねてみた。

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