侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「ガルルルルル」

 アールは、世にも怖ろしいうなり声を発している。

「チッ、こいつめ。だれか、こいつをぶっ殺せ」
「やめて」

 ノーマンの腕を振りほどこうと暴れるけれど、びくともしない。

「アール、逃げなさい。行くのよ」

 せめてアールだけでもここから逃さないと。

 絶望の中、ノーマンの仲間の一人が都合よく廊下に転がっている酒瓶を拾い上げ、それを振りかざしてアールに迫った。

 アールはますます唸り声を上げるだけで、わたしの命令に応じようとしない。

「逃げなさい、アール」

 半狂乱状態である。それでも、彼は逃げようとしない。
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