侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

ええっ、わたしがアールに?

 んんん?

 わたし、小さくなった?

 というのも、視線がいつもより低くなっている気がする。

 周囲を見まわすと、すごく広い場所に立っている。

 多くの男性が行ったり来たりしていて、そのすべての男性が軍服に身を包んでいる。

「『アージェント・ルプス』、将軍がお見えだぞ」

 だみ声で上を見上げると、軍服姿のかっぷくのいい男性がこちらを見おろしている。

 っていうか、いまなんて言ったの?

「アージェント・ルプス」?

 アール? どういうこと?

 そのとき、自分がネックレスをしていることに気がついた。ネックレスみたいなものといった方がいいかしら。

 ネックレスをすると首が真っ赤になってしまう。だから、いっさい装着しないのに、いまは首になにか装着している感覚がある。
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