侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

侯爵の真実

「アール、すまなかった。大丈夫か? ここに来て、リエに顔を見せてやってくれ」

 侯爵に導かれるまま、寝台に近づいた。

 体中が痛い。

 階段から落ちたからかしら?

 そこは、間違いなさそう。

「リエはおまえのことを心配していたぞ。だが、彼女は、彼女は……」

 侯爵は、声を詰まらせた。

 またドキリとした。

 彼が涙を流している。

 そっと寝台をのぞきこんでみた。

「彼女は、目を覚まさない」

 寝台の上には、わたしが横たわっていた。

 まるで死んでいるかのような表情と雰囲気で。
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