侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
「アール、気持ちがいいわね」

 庭の木の下で、彼にもたれて日向ぼっこをするのが気持ちよすぎる。

 ときにはおやつのクッキーとジャーキーを食べながら、あるいは紅茶とお水を飲みながら、ボーッとすごすのである。

 もちろん、敷地内を散歩したりもする。

 王宮にいたときは、夜間人がいないときに庭園や王宮内を散歩していた。とはいえ、夜間は近衛兵たちが夜間警備をしている。彼らに見つかったら、すぐに執事長やメイド長に報告されてこっぴどく叱られてしまう。それから、折檻も。

 だから、ほんのちょっとそこら辺りを侵入者のようにコソコソ歩くだけだった。

 だけど、いまは違う。アールと歩くのだって追いかけっこをするのだって、なんでも自由。

 彼と庭で遊ぶようになって初めて、自分の体力のなさに驚いてしまった。

 とにかく、走れない。走れないだけではない。スキップをしようにも足がもつれてしまう。歩くのですら、少し歩くと疲れてしまう。

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