婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
これは皇輝に付けられた痕だ――…!!
慌てて鏡の前で確認すると、他にも首筋や胸元といった場所に赤い印がいくつもある。
皇輝……!!
だからやりすぎなのよ!!
試着室のカーテン越しにキッと睨むと、クスクス笑う皇輝が目に入った。
いや笑い事じゃないから!!
恥ずかしすぎるじゃない……!!
「お待たせ致しました、こちらの黒いドレスはいかがでしょう?」
持ってきてくれたのは、黒いレースのドレスだった。
長袖で胸元が詰まったタイプのドレスだけど、レースで透けるようになっているのが上品でセクシーだ。
シルエットもすごく綺麗に見えるし、大人っぽくて素敵かも。
「……。」
着替えて出てくると、皇輝は目を見開いて私を凝視していた。
「黒もよくお似合いですよ」
「あ、ありがとうございます」
皇輝はさっきから私を見つめたまま、何も言わない。
私はこれ結構気に入ったんだけど、無反応ってことは微妙ってこと?
「ちょっと何とか言ってよ」
「……綺麗すぎて驚いた」
「えっ」
「どれも似合ってたけど、これが一番綺麗だ」
「……っ!」
そんな風に褒められると思っていなかったので、思わず顔が熱くなる。
「このドレスにします」
「かしこまりました」