婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
帰り支度をして、ふと皇輝はまだいるのか気になった。
いつも私が一人で残業してると早く帰れってせっつきに来てたけど、今日はどうなんだろう。
気になって社長室を覗いてみたら、まだ部屋の明かりがついている。
皇輝は誰かと電話しているようだ。
通話を終えると、大きく溜息をついた。
すごく疲れた表情をしてるけど、すぐにPCに向き直ってカタカタとキーボードを叩き出す。
トントンとノックしてみた。
「社長、お疲れ様です」
「妃乃。まだいたのか」
「これから帰るところです。社長は帰られないんですか?」
「ちょっとな……」
チラリとデスクを見たら、シエロジャパンのコンペ資料が置かれている。
他にもシエロに関する企業分析書もあった。
コンペに負けたことは皇輝の耳にも届いてるはず。
今回のことは皇輝も残念だったろうな。
「シエロの件、残念でしたね。良い企画だと思っていたのですが」
「本当だよ。内容ならうちも負けてない、むしろ上だったはずなのに、信頼度で負けた。
クソッ、俺の力不足だ」
「そんなことないですよ。社長がいなければコンペの挑戦権すらなかったんですから」
「だったら最初から断れよ!天王寺に少しでも媚び売っておこうって魂胆が見え見えなんだよ!
こっちは本気だってのに」