婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
スーツをビシッと着こなして、すっかり大人の男といった雰囲気だ。
身長も高いな。
皇輝とどっちが高いだろう?
いやいやそんなことより、博誠堂って言ったよね?
「もしかして、斎藤さんの言ってたやり手クリエイターって、岸くんのこと……?」
もしそうなら、強力なライバルってことになるけど――。
「き、気になる……!!」
私はもらった名刺を見た。
電話番号も書かれている。
これは元カレに連絡するわけじゃない、敵情視察だから!とよくわからない言い訳をして、ショートメッセージを入れてみた。
「中村です。
さっきは突然でびっくりしました。
名刺ありがとうございます」
うーん、堅苦しいかな?
まあいいか、とりあえず様子見ということで。
その後会社に戻り、思わぬハプニングでてんてこ舞いになり、スマホを見る余裕もなかった。
むしろ岸くんに会ってメッセージを入れたことを忘れてしまったくらい。
大変だったけど何とか落ち着いて、会社を出たのが19時頃だった。
「――中村!」
「え……、岸くん!?」
なんと会社を出たら、目の前には岸くんがいた!
えっどうして!?なんでうちの会社の前に!?
「メッセージありがとう。その後返事なかったから、悪いと思ったけど来ちゃった……」