婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
「…岸くん、博誠堂に勤めてて、ベリーズの担当者なんだって。
今日ベリーズの打ち合わせに行った時、たまたま会ったの」
「マジか……」
「シエロを取ったのも岸くんなんだって。
うちにとってはライバルだね」
シエロまで?
マジかよ……あいつが博誠堂に入社してたとは思わなかった。
「だからライバルの動向が気になって、名刺もらったから連絡入れてみたら会社まで来てたの。
挨拶程度で大した話はしてない。
皇輝が心配するようなことは何もないからっ!」
乱れた服を直しながら、ギロリと睨む妃乃。
完全に怒ってる。
「……悪かった」
「ほんとだよ!玄関なんて嫌だからっ」
「でも、なんでわざわざ会社の前まで来たんだよ?」
「私がすぐに返信しなかったからじゃない?
戻ってからずっとバタバタでスマホ見る余裕もなかったから」
でも、たかがそれだけのことで、わざわざ会社まで行くか?
「……あいつ、まだ妃乃に気があるんじゃないのか?」
「は?」
「未だに旧姓で呼んでたし」
「高校の時からそう呼んでたからでしょ?」
「でも……っ」
高校の時にはもう天王寺だったじゃねぇか。
天王寺とは呼びたくないっていう意地を感じてしまうのは、俺の考えすぎなのか?