婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


「…岸くん、博誠堂に勤めてて、ベリーズの担当者なんだって。
今日ベリーズの打ち合わせに行った時、たまたま会ったの」

「マジか……」

「シエロを取ったのも岸くんなんだって。
うちにとってはライバルだね」


シエロまで?
マジかよ……あいつが博誠堂に入社してたとは思わなかった。


「だからライバルの動向が気になって、名刺もらったから連絡入れてみたら会社まで来てたの。
挨拶程度で大した話はしてない。
皇輝が心配するようなことは何もないからっ!」


乱れた服を直しながら、ギロリと睨む妃乃。
完全に怒ってる。


「……悪かった」

「ほんとだよ!玄関なんて嫌だからっ」

「でも、なんでわざわざ会社の前まで来たんだよ?」

「私がすぐに返信しなかったからじゃない?
戻ってからずっとバタバタでスマホ見る余裕もなかったから」


でも、たかがそれだけのことで、わざわざ会社まで行くか?


「……あいつ、まだ妃乃に気があるんじゃないのか?」

「は?」

「未だに旧姓で呼んでたし」

「高校の時からそう呼んでたからでしょ?」

「でも……っ」


高校の時にはもう天王寺だったじゃねぇか。

天王寺とは呼びたくないっていう意地を感じてしまうのは、俺の考えすぎなのか?


< 118 / 186 >

この作品をシェア

pagetop