婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
妃乃は呆れたように顔を竦める。
「皇輝、ヤキモチ妬いてくれてるのかもしれないけど、岸くんとはもうとっくに終わったの。
今は強力なライバルなんだから。
コンペに勝つことに集中しないと」
「……、明日から急遽出張に行くことになった」
「そうなの?どこに?」
「福岡」
「福岡かぁ。いつまで?」
「週末に帰る」
「わかった。気をつけて行ってきてね」
「俺がいない間にあいつに会うなよ。なるべく」
「だから、心配しないでよ!でも岸くんにはちゃんと話しておくから。
あんなの驚かせたと思うし、皇輝と結婚することも伝えておけば心配ないでしょ?」
本音を言うと二度と会わないで欲しいが、仕事の都合上そういうわけにもいかないだろう。
渋々OKするしかなかった。
はあ、最悪だ……。
なんでこんな時に出張なんだろう。
* * *
「はーーーー……」
「コウキ、今ので溜息5回目だヨ?」
「うるせえな。こんな時に出張なんか入れやがって」
「ボクのせいじゃないってば」
このアッシュブラウンの髪にグレーの瞳を持つ男は、俺の秘書・ルーク。
ロンドンの大学の同級生で、元々は別の企業で社長秘書をやっていた。
イギリス人の父と日本人の母を持つハーフで、ロンドン育ちだが、大の日本のアニメファン。
俺が日本に戻ることを聞き付けると、自分を秘書にして連れて行けと言い出した。