婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


真面目な好青年で社内の野球部にも積極的に参加し、顔が広く人望も厚いか。

仕事ぶりも真面目そのもの。
気に食わねえな……。


「なんか粗がねぇのかこいつ」

「ほら、公私混同してる」

「違う!あくまでBプロの敵情視察だよ!」


「ホントにー?」と胡散臭そうな顔をするルークの顔面を殴りたかった。

うるせえな、俺が一番わかってんだよ。

余裕ぶっていても本当は余裕なんてない。
妃乃を独占したくて堪らない。誰の目にも映したくない。
俺だけを見て欲しい。

元カレなんかに嫉妬するなんて馬鹿げてる。
でも、どうしても嫌だった。

岸が妃乃を「中村」と呼ぶのも、妃乃に視線を向けるのも。

中村じゃない、とっくに天王寺なんだよ。
これから先もずっと、妃乃は天王寺で俺の妻なんだ。

まだ誰のものでもないみたいに、旧姓で呼ぶな!

そもそも指輪してることに気づいてないのかよ!


「クソ……っ」


情けないこともわかってるし、妃乃を信じてないわけじゃない。

それでもこの湧き上がる激情を押さえることができない。


「絶対にベリーズのコンペは勝つ……!」


あの男にだけは譲りたくない。
負けてたまるもんか。

その時、スマホが鳴った。
この気分最悪の時に誰なんだよ……。


< 121 / 186 >

この作品をシェア

pagetop