婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


「今日一次選考の納期でしょ?他の案件とも掛け持ちで大変ね」

「あれ急だったよね。まあ割と進められてたから、手直しして昨日出せたからよかったけど」

「流石。こっちなんてトラブルがあってさっきまでバタバタだったのに」

「それはお疲れ様。結果はどうあれ、お互い頑張ろう」

「ええ、もちろん」

「それじゃあ、また」


岸くんは爽やかに立ち去っていった。

すごいな、岸くんは。
きっと大型案件をいくつも掛け持ちしているのかもしれない。

でも、疲れた様子も切羽詰まった様子もない。
私もあれくらい余裕が持てたらいいのだけど。

博誠堂はどんな企画を持ってきたのだろう。
正直、かなり気になる。
今回のコンペで最大のライバルになることは間違いないし、恐らく一次選考は通過してくると思う。


「……いや、今は自分たちのことに集中しないと!気にしてても仕方ない」


コーヒーを飲んで切り替えて、私はオフィスに戻った。

無事にひと段落したからなのか、全体的に落ち着いた雰囲気で仕事ができた。
他部署の先輩に「昨日はすごくピリピリしてて話しかけられなかった」と言われてしまった。

本当に申し訳ない……。


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