婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした〜」
今日は早めに切り上げて帰宅することにした。
多分明日にはコンペ結果が出るだろうし、落ち着かなくなるから早めに帰って明日に備えたい。
そういえば、今日は仕事以外で皇輝からの連絡がない。
今何してるんだろう?
「えっ!?」
目の前の光景に思わず目を疑った。
目の前にいたのは、皇輝だった。
しかも、その隣には知らない女性がいる。
どういうこと!?
どうして皇輝がいるの?
今は福岡にいるはずでしょ――?
それにあの隣の女性は一体誰なの!?
ドクドクと心臓の脈打つ音がはっきりと聞こえる。
震えながらスマホを取り出し、皇輝に電話をかけた。
「もしもし」
「もしもし……皇輝?」
「どうした?何かあった?」
「いや、今日は早めに上がって…これから帰るところで、皇輝はまだ仕事かなって……」
「ああ、今移動してる」
「ど、どこにいるの?」
「どこって、福岡にいるけど」
――嘘ついた。
「そう、なんだ……頑張ってね」
「妃乃も頑張れよ」
「う、うん、それじゃあ……」
通話終了をタップして、そのままスマホを持った手をダランと落とした。
嘘ついた。
福岡にいるなんて、嘘じゃない。
さっき目の前にいたじゃない――。
あれは見間違い?
ううん、絶対皇輝だった。見覚えのあるスーツだった。
私が皇輝を見間違うはずがない。
どうして?
なんで嘘ついたの?