婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


また指先から震えが止まらなくなる。


「信じてるし、信じたいって思ってるよ。
でも電話してみたら、福岡にいるって嘘つかれて」

「浮気してるってこと?」

「違う!皇輝はそんなことしないっ」


思わず声を張り上げてしまい、後ろにいた他のお客さんが驚いて振り向いた。
「すみません…」と小さく謝った。


「皇輝は、浮気なんてしない……」

「だったらどうして嘘つくの?」

「わからない……」

「旦那の出張中の浮気って結構あるらしいよ。
職場の先輩、それが原因で離婚してた」

「…………。」


俯く私の目の前に、マスターがライムを差したレモンイエローのカクテルを差し出してくれた。


「こちら、ダイキリでございます」

「ダイキリ?」

「ホワイトラムにライム、砂糖をシェイクしたお酒です。希望、という意味が込められております」

「希望、ですか……」

「貴女の信じたいというお心に、希望がございますように」


マスターの笑顔はとても優しくて安心できた。
何だか実家にいるような感覚になる。

一口飲むと、スッキリとした甘さが口の中に広がる。


「美味しいです」

「ありがとうございます」


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