婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


甘みと酸味のバランスが絶妙で飲みやすく、あっという間に飲み干してしまった。
饒舌になったのは、意外とアルコール度数の高いお酒だったからかもしれない。


「私ね、皇輝と付き合う前に別の人との結婚が決まってたけど、浮気されて婚約破棄されて。
助けてくれたのが皇輝だったんだ。

その後に告白されて…でもまたダメになって、弟まで失うかもしれないと思ったら、前に進むのが怖かった」


岸くんはウイスキーを飲みながら、黙って私の話を聞いてくれた。


「それでも皇輝は、私のことが好きでプロポーズしてくれた。
高校の時からずっと好きでいてくれたんだって」

「……知ってたよ」

「えっ」

「たまにすれ違うと、ものすごく睨まれたから」

「ええっ!?そうだったの?」

「何となく弟が姉を心配するソレとは違うな、明らかに俺に敵意があるなって思ってた。
だから俺も焦って、初デートなのにあんなこと言っちゃったんだよね」


付き合って初めてのデート、休みの日は皇輝とゲームしてると答えた私に、岸くんは明らかに嫌そうな表情で「やめてくれないか」と言った。

その気持ちが理解できなくて、そのデートを最後に別れたけど――岸くんは皇輝の気持ちに気づいてたなんて。


「……ごめんなさい、何も知らなかった」

「いやいいんだ。俺も余裕なくて心狭かったなって今は反省してる」


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