婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
ウイスキーの氷がカランと音を立て、岸くんは苦笑した。
「……だから、あいつが現れた時もそこまで驚きはしなかった」
「そっか」
「結婚するって聞いた時は流石に驚いたけど、でも天王寺さんがすごく幸せそうだったから、よかったなって思ったんだ。
――でも、あいつが君を傷つけるなら…俺にも横入りする権利があると思っていい?」
「えっ?」
岸くんは真剣な眼差しで私を見つめていた。
この目を以前にも見たことがある。
高校時代、私に告白してくれた時と同じ目をしてる。
「本当はずっと君が忘れられなかった」
「岸くん……」
「あの時の俺は自分に自信がなかったんだ。
天王寺みたいなすごい奴が近くにいて、それでも俺のこと好きでいてくれるのか不安で…。
だから、俺から手離してしまった。あの時のこと、ずっと後悔してた。
少しでも自分に自信が持てるようになりたくて、今の会社に就職してがむしゃらに頑張って、大きな仕事を任せてもらえるようになった。
やっと自分に自信が持てるようになったんだ」
あの時と同じ目をしてると思ったけど、少しだけ違う。
高校の時は頬に赤みが差していて、私の反応を窺うような不安さも見え隠れしていた。
でも今は違う。
不安も迷いも一切感じさせない。