婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


落とされることが決まっているなんて冗談じゃない。
私たちはこのコンペを勝ち取るために、チーム一丸となって頑張ってきたんだ。

そのために沢山時間をかけてきた。
その時間をドブに捨てるような行為じゃない……!!


「私はこの20周年イベントを絶対に成功させたい。そのための妥協は一切するつもりはありません。
だから汚い裏取引に応じたくはない。あなたに話したのはそれが理由です」

「阿僧さん…」

「私はフェアな目で素晴らしいと思う企画を採用したいと思っています。
チェスターさんの企画には、20周年を盛り上げたいという熱意が感じられました。
私はチェスターさんのような方々と仕事がしたいと思っています」

「っ、ありがとうございます……そんな風に言っていただけて、大変光栄です」


少し目頭が熱くなっていた。


「ですが、博誠堂さんの方が素晴らしいと判断したら、例え裏取引があろうが博誠堂さんを選びます。
そこはフラットに見させていただきますので」

「いえ、ありがとうございます」

「……残念ながら一社員の私に裏取引を止める術はありませんが、お伝えだけはしておこうかと」

「お気遣いありがとうございます」

「では、失礼します」


阿僧さんとの通話を終えた。

思わず大きな溜息を吐き、机に突っ伏した。


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