婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
「ただいま……」
「おかえり」
「えっ……」
皇輝が帰っていた。
皇輝はニコッと笑うと、玄関で立ち尽くす私を抱きしめる。
「おかえり、妃乃。それからただいま」
「おか、えり……?」
「何でいるのって顔だなぁ。何とか今日終わらせて帰って来たのに」
「……。」
「妃乃……」
くいっと顎を持ち上げられたけど、咄嗟に胸を押し返してしまった。
「……妃乃?」
「なんでそんなに普通にできるの?」
「どうした?」
「どうしたじゃないよ。本当はどこに行ってたの?
福岡じゃなくて、もう帰って来てたんだよね?」
「……!」
「誰と一緒にいたの?私見たんだから」
「妃乃、」
「今日もなんで返信くれなかったの?何なの、既に博誠堂で決まってるって。
私たちの努力は?今までの時間、全部無駄じゃん」
「妃乃」
「ねぇ何とか言ってよ!!」
皇輝のシャツの裾をギュッと握りしめる。
その手を皇輝が握りしめた。
「ごめん、ちゃんと説明するから」
「何を説明……?聞きたくないんですけど」
「妃乃、頼むから聞いてくれ」
「やだ、無理……っ!」
「妃乃!!」
皇輝は懇願するように、まるで子犬みたいな目を向けてくる。
「頼む、話を聞いて」
「…………。」