婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
皇輝が言い淀んだことを見逃さない。
「女性と一緒だったから気まずかったんじゃないの?」
「待て待て、妃乃が東京で俺のこと見てたんなら、その人は男…いや女か」
「どっちなのよ!!」
「いや、女だけどそういうんじゃなくて」
「どういうこと!?髪が長くてスカート履いてハイヒール履いた女性の後ろ姿だったよ!」
「その人、俺の叔父なんだよ」
「えっ!!」
お、叔父さん!?!?
「後でちゃんと紹介するつもりだったけど、その人は俺の母方の叔父なんだ。
所謂ニューハーフってやつで。だからまあ、女ではあるな…」
衝撃の事実にポカンと口を開けてしまう。
多分今、うぱおと同じ顔をしている。
「さっき言った新規事業の声掛けをしてくれたのがその叔父で、福岡にいる間もずっと一緒だった。
叔父は実業家でニューハーフバーとかいくつも経営しててさ」
皇輝にそんな親戚がいるなんて知らなかった……。
というより、お母さん側の親戚と交流があったことが意外だった。
皇輝の実の両親は離婚した時に皇輝の親権を争い、激しい裁判を行ったと聞いたことがあるから。
結局天王寺の跡取りが必要だったお父さんに引き取られたみたいだけど、相当複雑だったんだろうなと思っていた。
「実の母親ともたまに連絡取ってるよ。それも含めて紹介するつもりではいた」
「そ、そうだったんだ」
「……まあその前に親父をどうにかしないといけないんだけどな」
「え?」
「いや、何でもない。とりあえず誤解は解けたか?」
「う、うん……」