婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
――ピンポーン。
突然鳴り響くインターホンを合図に、お互いの顔が離れる。
急にハッとして頬を赤らめる妃乃は、「はーい!」と返事をして慌ててインターホンの方へ駆けてしまった。
あっという間に俺からすり抜けてしまい、突然の来訪者に不満が募る。
誰だよ、こんな朝から……。
「皇輝〜!おはよ〜〜!」
「ゲッ……」
インターホンのカメラに映し出されていた人物を見て、思わず顔を歪める。
「えっと、知り合い……?」
「この前言ってた叔父」
「えっ!?」
「早く開けて〜!」
このままブチっと切ってやりたかったが、後でめんどくさいことになるので仕方なくロックを解除する。
はーー、最悪だ……。
ここはタワマンの高層階だというのに、何故か体感5秒くらいでピンポーンという音がした。
嫌々ながらにドアを開ける。
「皇輝〜!来ちゃった〜!」
「来ちゃった〜じゃねぇよ…」
茶髪の長いストレートヘア、真っ赤なスーツにサングラス、指輪やピアス、ネックレスといったアクセサリーに至るまで全て高級品で揃えた派手なこの人こそ、叔父のジュリアンヌ駒井。
通称ジュリー。
ふざけた名前だが、純日本人である。
「何しに来たんだジュリー」
「甥っ子の顔見に来ちゃいけないの?アンタがなかなか呼んでくれないからでしょ」