婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
「――おい!あそこにいらっしゃるのって…!」
「間違いない、ずっとロンドンにおられた天王寺社長の御子息じゃないか!」
「しかも婚約者が!?」
周囲はものすごくざわついているし、一気に私たちに注目している。
目の前にいる塔子ちゃんは信じられないと言いたげな表情で、顔を真っ赤にさせて唇をワナワナと震わせている。
歩は呆気に取られた様子で、酷くマヌケな顔をしていた。
いや、待って、今はそんなことどうでもいい。
零れ落ちそうだった涙が引っ込んでしまった。
「あの方が天下の天王寺の…!?めちゃくちゃイケメンじゃない!!」
「芸能人だと言われても疑わないわ!!」
「やだ、素敵すぎる…!!」
なんか別の意味でも注目されてる。
待って欲しい、確かにこの人物は正真正銘天王寺グループの御曹司だ。
でも待って、婚約者って何?
あなたは私の弟でしょ!?!?
「ちょっ、こう……んぐっ!」
「天王寺の姓を名乗っているというのに、無知とは恐ろしいものですね」
く、口を塞がれた…!
皇輝に手で口を押さえられ、モゴモゴしながら訴えかけようとするけど、まるで無視。
皇輝は塔子ちゃんと歩に近づき顔を寄せ、二人にしか聞こえない声で囁いた。
「……覚えておけよ。
お前たちなんかいつでも一捻りで潰せるんだ。
わかったら二度と妃乃に近づくな」