婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
17.決戦の時
今日はいよいよ、勝負の時。
シャツの襟を正し、深呼吸を一つ。
さっきから何度も腕時計を確認してしまう。
「緊張してる?」
「当たり前でしょ……」
Bプロの集大成とも言える、最終コンペの日なんだから。
喉がカラカラに乾いて水をがぶ飲みし、何度トイレに行ったことか。
それなのに皇輝はいつも通りだ。
「そういえば、裏取引はどうなったの?」
「安心しろ。その取引とやらにうちも参加させてください、御社の社長と天王寺グループは懇意にさせていただいておりますので、って言ったら青い顔してたよ」
「それ脅しじゃない!?」
「正当に持ってるカードを使ったまでだ。
コネってのは使うべき時に活用するものだからな」
ここまで開き直っていたらいっそ清々しい。
皇輝のこういうところは頼もしいなと思う。
「そういうわけだから、全力を出せよ」
「わかってます。このコンペ、絶対獲りますから」
皇輝が落選確定のレースを相手と同じスタートラインに立たせてくれたんだ。
今度は私の番。
絶対に成功させてみせる――…!!
「よし、行くぞ」
「はい」
私たちは決戦の舞台、ベリーズ本社へと足を踏み入れる。
あとはもう、自分たちの全てを出し切るだけ。