婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
大きな会議室に通されると、既に岸くんたち博誠堂社員が到着していた。
岸くんは私たちに気づくと、軽く会釈してくれたので、私も会釈を返す。
岸くんの表情はとても引き締まって見えた。
緊張しているようにも見えるし、余裕そうにも見える。
他にも担当の阿僧さん、ベリーズの営業部長、広報部長、そして社長。
全員が私たちを品定めするような、ギロリとした鋭い眼光を向けているように思えてしまう。
落ち着かないと――。
その時、バン!と背中を押された。
皇輝だ。
視線は前を向けたまま、手だけ背中に回して叩いてくれたらしい。
落ち着け、と言われているようだ。
――わかってる。
心の中で返事をし、小さく深呼吸を一つ。
――大丈夫、できる。
「それでは、これよりベリーズランド20周年PRに関する最終コンペを始めたいと思います。
まずは博誠堂さんからお願いします」
最初は博誠堂からか……。
「はい」と返事した後、岸くんが立ち上がる。
プロジェクターからプレゼン資料が映し出された。
「それでは、弊社からのご提案をさせていただきます。手元の資料も一緒にご覧ください」
ライバルだけど、すごくよく練られた企画だ。
流石は数々の広告を手掛けてきた大手企業。予算もしっかり考えられているし、無理なく安定的な報酬が見込めそう。