婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
少しでもこの熱意が伝わって欲しい。
もちろんそれだけでなく、数字としてもしっかりと示せたと思う。
「以上が弊社のご提案です。ご清聴いただき、ありがとうございました」
終わった頃には喉がカラカラだった。
今やれるだけのことは全部やった。
出し切ったと思う。
「両社ともありがとうございました。どちらも素晴らしいご提案でした」
そうコメントしたのは、ベリーズの社長さんだった。
素朴で優しそうな老紳士といった雰囲気の方だった。
「博誠堂さんは独自で培われたノウハウがあり、安定的でとても信頼感があります。
チェスターさんはなかなかに挑戦的ですねぇ」
褒めていただいているような気がするけど、博誠堂の方が好印象なのかな……。
「天王寺さん、一つご質問してもよろしいですか?」
「は、はいっ。是非!」
思わずピンと背筋が伸びる。
「ベリーズランドのどんなところが好きですか?」
どんな質問をされるのかと身構えていたが、社長さんの質問は思いがけないものだった。
予想外すぎて、一瞬戸惑って一拍遅れてしまう。
「……そうですね。いつでも色褪せない思い出を作ってくれるところでしょうか」
「ほほう?」
社長さんが少し前のめりになる。