婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
……もしかしたら今のタイミングじゃないのかもしれない。
でも言うならコンペが終わった、早いタイミングで言ってしまった方がいいと思った。
「ごめんなさい、岸くんの気持ちには応えられません」
頭を深々と下げる。
「私はやっぱり皇輝と一緒にいたい、この人が好きだって思ったから……」
「そっか……」
「あっ!この前のは私の誤解だったってわかったので!」
「……今日二人が会議室に入ってきた時、ああ俺はフラれたんだなって思ったよ」
岸くんの瞳はどこか遠くを見るような、切なさを感じた。
「言葉を発さずともわかってるって感じがして、公私ともに良いパートナーなんだろうなって。
見せつけられた気がした」
「見せつけたわけでは……」
「最初から俺の入り込む隙はなかったんだと思ったから、潔く諦められる。
ありがとう、天王寺さん」
「…っ、私の方こそ、ありがとう……」
これは心からの気持ちだ。
伝わらないかもしれないけど、岸くんのような素敵な人に二度も好きになってもらえて、とても光栄だった。
「じゃあ、そろそろ会社に戻るね。どちらが勝っても恨みっこなしですよ」
「わかっています。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
最後はビジネスモードでお別れをした。
多分これでよかったんだろう。