婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
お会計を済ませて出たら、電話が鳴った。
「はい」
「この浮気者」
「違います。ちゃんと返事をしてきただけです」
「わかってるよ」
その直後にポンと肩を叩かれた。
どうやらすぐ近くにいたらしい。
「皇輝…もしかして見てたの?」
「違えよ。電話したらたまたま目の前にいたってだけだよ」
「本当に?」
「本当だっつの。さっきベリーズから出てきたところだから」
「何の話してたの?」
「今後ともチェスターをよろしくお願いしますって胡麻すっといた」
「何それ」
思わず笑ってしまう。
そのまま二人で歩いて、タクシーを拾った。
タクシーの中でポツンと溢してみた。
「……社長さん、どうして私にあんなこと聞いたんだろう」
てっきりコンペの内容のことを聞かれるのかと思っていたら、まさかの質問だった。
「さあな」
「ねぇ、私ちゃんと答えられてた?咄嗟だったから、実はもうなんて答えたか覚えてないんだよね」
「ああ、よかったと思うけど?ちょっと腹立った程にな」
そう言ってちょっとむすっとした表情で、頬杖をつく皇輝。
「腹立った?なんで?」
「目の前で元カレの思い出も肯定されたらいい気しねぇだろ」
「え?ああ……」