婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
だけど一人目のスピーチが始まったところで、沢井さんから電話があった。
「ええっ!?渋滞!?」
「そうなんです…あと20分くらい動けそうになくて」
「やばい、間に合わないかも……」
どうしよう!?
流石にもう延ばすことはできないし、私たちの都合で待ってもらうなんて論外だ。
「わ、わかった。無理に急がなくていいから、気をつけて来て。
こっちは何とかするから……!!」
もうこうなったら、動画なしでスピーチするしかない……!!
今の人のスピーチもめちゃくちゃすごいし、流れている動画映像もかなり作り込まれている。
多分他の人たちも見応え、聞き応えのあるスピーチをするのだろう。
その中の最後に私の下手くそなスピーチを聞かせるなんて、正直かなり恥ずかしいけれど……。
みんなが頑張って作ってくれた動画を流せないのも悔しいけど、仕方ない。
「妃乃さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫!」
本当は生まれたての子鹿みたいに足がガクガクしてるけど。
でも、やるしかない――……
「妃乃」
「社長…すみません、渋滞にハマって間に合わないみたいです…」
「ルークから聞いた。先に話すことがあるからそれで時間稼ぐ」
「えっ!?でも、」
「大丈夫だ。元々話す予定だったことを前置きにするだけだから」
そう言うと皇輝はスタッフに耳打ちし、そのスタッフがインカムで司会者に何か伝えた。