婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
なんていうか、元々の私のズボラさがありありと出てしまっているところは否めない。
会社では仕事がデキると思われていたけど、本来の私はめんどくさがりのズボラ女だし。
そりゃあお父さんが余計に心配するのも無理はない。
「ぶっちゃけると、妃乃を俺の婚約者ってことにするのは親父も賛成なんだよ。
どこの馬の骨ともわからん男にまた妃乃を奪われるくらいなら、虫除けのためにもそうしろって」
「お、お父さん……」
「俺としても女避けになってちょうどいい。
ウィンウィンだろ?」
「ウィンウィンなの!?それ私の意思がないと思うんだけど!?」
「じゃあ、新しい恋愛するのか?一から婚活するのかよ」
「そ、それは……」
今は正直、恋愛したいという気持ちにはなれない。
ましてや結婚なんて考えられるわけない。
「やっぱりする気ねぇじゃん」
「今はね!?でも、いずれかは……」
「させねぇよ」
言葉を遮られ、ドン!と壁に追い詰められる。
見たこともないような皇輝の怖い顔と低い声、なのに整った顔に至近距離で迫られ、不覚にもドキッとしてしまう。
弟なのに。
「今日から妃乃は、姉じゃなくて俺の妻だから」
「……っ!」
「これは決定事項だから。
よろしくな――奥さん?」
「な……っ!」
拒否権はないとでも言いたげな強引さ、そうだ、天王寺皇輝という男はそういう奴だった。
まるで自分がルールとでも言いたい王様気質、昔から全く変わっていないではないか。
それは姉だろうが関係ないのだ。
こんな生意気な弟でも心臓がバクバクしているのは、皇輝の顔が無駄に良いことと色気たっぷりのバスローブ姿だから。
あとは突然突拍子もないことを言われているせいなのだと、何故か言い訳のように言い聞かせていた。