婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
4.癒えない傷
朝起きて洗面台の前に立ち、我ながらブサイクな顔をしているなぁと思った。
視力0.1の裸眼でもわかる、この顔は酷い。
「うわっ、びっくりした。何ボケっと立ってんだよ」
「……。」
「妃乃、そのパジャマのアホヅラと同じ顔してんぞ」
私のパジャマにはうぱおがプリントされている。
泳げるはずなのに浮き輪をしっかりと持ち、今から海に行こうとするうぱお(ウーパールーパーは淡水魚)がアホかわいくてお気に入りの1着だ。
「うぱおと同じ顔ってことは…褒めてる?」
「なんでそうなんだよ。寝惚けてないでさっさと朝飯食え」
そう言って皇輝は洗面所から引っ込んだ。
顔を洗って歯を磨き、化粧水と乳液で顔をはたく。
幾分頭がスッキリしてきたので、コンタクトレンズを装着した。
視界がクリアになったところで、ファンデーションを塗りたくる。
ズボラの私はメイクもとにかく時短が命。
最低限でどれだけ盛るか、研究を重ねてきたメイクはもう慣れたものだ。
ほぼ5分で顔が完成した。
「おはよう」
「……その変わり身、もはや詐欺だな」
「いい加減慣れてくれる?」
今更だけど、ここは私と皇輝が二人で暮らすタワーマンション。
一人暮らしを禁じられた私は実家に戻るか皇輝と住むかの2択しかなく、夫婦なんだから俺と住めと半ば強制的にこうなった。