婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
とは言え、寝室は当然別室。
家事は専任家政婦さんが土日祝日以外の平日毎日来てくれて、全ての家事をこなしてくれている。
これはお互い仕事に全集中するため、皇輝が決めたことだった。
「妃乃が家事なんてできるわけないしな」
一言余計だが、その通りなので何も言えなかった。
そんなわけで私は汚部屋ではなく、毎日綺麗で快適な部屋で過ごせているというわけだ。
「土日で汚してるけどな」
「うるっさい!」
この生意気な言い草、本当にかわいくない弟だ。
そう、やっぱり私にとって皇輝は弟なのだ。
血が繋がっていなくても、たとえ今は偽装夫婦だとしても、その事実は変わらない。
なのに、皇輝は私を姉だと思ったことは一度もないと言った。
はっきり言ってショックだった。
両親が再婚してから、何だかんだ家族として仲良くやってきたと思っていたのに。
確かに皇輝に比べて私は平凡だし、頼りないのかもしれないけど……。
「そんな言い方しなくても……」
だから私は決めたのだ。Bプロのリーダーとしてプロジェクトを成功させ、見返してやるのだと。
「行ってきます。また会社で――社長」
「おい、妃乃」
「何?」
くるりと振り返った私の頬に、唇が寄せられた。
チュッというリップ音とともに唇が離れる。
「社長になるのは会社に着いてからだ」