婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
うるせえな、恋とかよくわかんねぇんだよ。
でも、妃乃と過ごす時間は結構落ち着く。
遠慮がいらないから、何も気にする必要がなくて……
「――って、おま……!」
「何?」
「そんな格好でうろつくなアホ!!」
妃乃の胸元が大きく開いてるのが見えてしまった。
俺のこと意識しなさすぎだろ!?
少しは気遣えよ……!
そのモヤモヤが段々と形を変えていく。
ある日、妃乃から衝撃の言葉が出た。
「彼氏できた!」
は……?彼氏……?
「えっそうなの?おめでとう!」
「きっ妃乃ちゃんに彼氏は早いんじゃないかなぁ!?」
「何言ってるの、お父さん。18で初彼って遅くない?」
「妃乃ちゃーーん!!」
なんだよ。彼氏って誰なんだよ。
「同じクラスの岸くんって言ってね…実は私も前から気になってたんだ」
見たこともない、嬉しそうにはにかんだ表情。
「今度デートなんだ!何着ていこうかな〜」
「…ジャージにすれば?」
「デートにジャージなんてあり得ないでしょ!」
……俺の前では平気で着てるじゃねぇか。
浮かれている妃乃を見ていると、何故かイライラした。
彼氏の前では俺には見せない、妃乃を見せることが無性に腹立つ。
「行ってきます!」
いつもはスッピンのくせにメイクして、髪も母さんに綺麗にしてもらい、下ろしたてのワンピースを着て妃乃はデートに向かった。