婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
妃乃はヘラヘラ笑っていたが、俺の顔を見るとハッとした。
「皇輝のせいじゃないからね!?
てかこんな風に言われるなら、別れて正解だったと思ってるから!」
「……なんで」
「だって、皇輝は大切な家族で弟だもん。
家族との時間も私にとっては大事なのに、それを否定する人とは付き合えないよ」
そう言って微笑んだ。
その笑顔にドキッとした。
家族の前では笑顔だったけど、自室で声を押し殺して泣いていたのを覚えてる。
本当はつらかったくせに、無理して笑ってバカじゃねぇの……。
俺なら、絶対そんな顔させないのに――。
妃乃が好きだと自覚してしまった。
一番好きになってはいけない奴に恋してしまった。
妃乃にとって俺は弟でしかなくて、その関係が変わることを望んでいない。
俺の前で無防備なのも男として見ていないから。
でもこの無防備な姿を曝け出せるのは俺だけなんだと思うと、妙に嬉しくもあった。
それと同時に男として見られない悔しさと、それでもかわいいと思ってしまうバカな自分に気づかされる。
両親のためにも、この関係を崩すわけにはいかない。
そもそも俺が妃乃を好きだと知ったら、親父に殺されるかもしれない。
「皇輝!ゲームしよ!」
俺の気持ちなんかつゆ知らず、今日も無邪気に誘ってくる妃乃が愛おしくて腹が立つ。