婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


流石にヤバいと思って、妃乃から離れるためにロンドン留学を決めた。

前々から親父にも留学を勧められていたし、天王寺にはロンドン支社もあるのでそこへの就職も視野に入れていた。

傍にいたらもっと好きになる。
叶わない恋なのにこれ以上好きになりたくない。


「お帰り、皇輝」


なのに、帰国する度に笑顔で温かく出迎えてくれる妃乃がもっと好きになった。

妃乃の裏表がなく、真面目で家族思いなところが好きだ。
色気ゼロの芋女スタイルですら、かわいく見えてしまうようになった。

本当は繊細な一面もあるのに、決して人前では見せず笑顔で振る舞うところも愛おしい。


……なんで家族として出会ってしまったんだろう。


ロンドンの大学を卒業し、そのまま天王寺のロンドン支社に就職した。
ロンドンには良い女が沢山いたが、それでも俺の目に魅力的に映るのは妃乃ただ一人だった。

いい加減こんな不毛な恋はやめたいのに。
でも、どうしてもやめられない。


「聞いて皇輝くん、妃乃ね結婚が決まったの!」


母さんからの電話を受け、ようやくこの恋に終止符が打てると思った。

心からおめでとうと言える自信は正直ないが、それでも妃乃には幸せになって欲しい。

同じくして親父から、チェスターという広告代理店の社長に任命したいと言われた。
本格的に後継者として進む時がきた。

タイミングとしてはベストだ。
仕事に集中していれば、きっといつか妃乃を祝福できる時が訪れる。

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