婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
そう思っていたのに――……、
「婚約破棄?」
「そうなの…私も信じられなくて……」
帰国して実家に着いたその日に、妃乃が婚約破棄されたと両親から聞いた。
どうやら彼氏が浮気し、別の女に乗り換えたらしい。
「私も詳しくは聞けてないのだけど…」
「ふざけるな!!妃乃ちゃんを…私の娘を傷つけてタダで済むと思ってるのか!
訴えてやる!!」
「やめて、あなた…!」
親父はかなり怒りを爆発させていた。
そのせいなのか、俺はどこか冷静だった。
……なんでどいつもこいつも妃乃のことを傷つけるんだ?
どうして妃乃を幸せにできないんだ?
俺は触れることさえできないのに――……
その時、何かが吹っ切れた。
「なあ親父、提案があるんだけど……」
怒り狂って妃乃を二度と嫁にやらんと騒ぐ親父に、妃乃を表向きは俺の妻にすることを提案した。
両親は驚いたけど、メリットを伝えたら親父はむしろ大乗り気だった。
「確かにそれなら妃乃ちゃんをつまらん男に奪われる心配はないな!」
「でも皇輝くん…本当にいいの?」
「いいんだよ。どーせ俺も今は結婚する気ないし。
女避けになって助かる」
まあ、いずれは妃乃を本当に嫁にするつもりでいるけどね。