婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
やっぱりあれは夢じゃなかった……?
本当に皇輝は私のこと好きなの――??
「な、なんで……?」
謎は謎を重ねるけれど、ぼうっとしている余裕はない。
「行ってきます!」
「妃乃、」
玄関から出ようとした直前、グイッと顔を掴まれてチュッとキスされた。
「な……っ!」
「行ってきますのキスって言っただろ?」
「〜〜っ!!」
「ほら行くぞ、奥さん」
……これは一体誰なの?
え、本当に皇輝??
何がどうしてこうなったの?
急に肉食獣のようになった弟に、頭が全くついていけてない。
これは偽装結婚じゃなかったの……?
一体何を企んでいるわけ!?
* * *
「リーダー、おはようございます」
「おはようございます。今日もよろしくね」
だけど会社に着いた途端、瞬時に切り替えられるのは我ながら流石だと思う。
「リーダー、次の打ち合わせの資料、作成されます?」
「あ、そうね、後で作って……いや、やっぱりお願いしてもいい?」
「えっ、はい!」
「ありがとう。よろしくお願いします」
「完成したらチェックお願いします!」
思い切ってお願いしてみたら、想定外にとても嬉しそうな顔をされてしまった。
その表情を見て、やっぱり自分でやりすぎるのは良くなかったなと思った。