婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


残業なんて好き好んでやるわけないじゃない!と言えるような立場ではないので、手を動かしたまま返す。


「すみません、私のミスです。
社長にご迷惑は絶対かけませんから、先にお帰りください」

「冷てえな…せっかくこれ、持ってきたのに」


そう言って皇輝は分厚いファイルを差し出す。


「似たようなユーザー分析書だ。参考にしていいぞ」

「あ、ありがとうございます…」


受け取ったファイルを開くと、どれも丁寧かつわかりやすくまとめられており、今回の分析に使えるメディアも揃っている。
これを参考にさせてもらえたら、あっという間に終わるかも……!


「終わりそうか?」

「はい!10分で終わらせます!」


もらった缶コーヒーをガブ飲みし、エネルギーチャージ完了!
やる気も集中力も大幅アップし、2倍速でキーボードを叩く。

宣言通り、10分で終わらせた。


「やったーー!!できたーー!!」

「お疲れ様」

「ありがとうございました!助かりました!!」

「当然だろ。明日の一次提案はBプロ最初の関門だからな。頼むぞ」

「はい!」


明日は社長も同席が決まっている。
失敗はできない、気を引き締めていこう。


「頼りにはしてるけど、あんまり気負うなよ。
俺もいるんだから」


皇輝は優しく微笑むと、ポンと頭を撫でてくれた。


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