婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
* * *
「どうなることかと思ったけど、あんな準備してるなら言ってよ!」
帰りの車中、皇輝のことを肘でつつく。
「あれは保険だったから。実際に使うかどうかはわからなかったんでね」
「全くもう……。でも、おかげさまで助かりました。
ありがとうございます、社長」
私は大袈裟に恭しくお辞儀する。
皇輝のことだ、「当然だろ」とか言ってふんぞり返るのかと思っていた。
「いや、今回は妃乃のおかげだよ」
「え?」
「妃乃があのマヌケヅラにご執心だったおかげで、先方の信用を勝ち取ったんだからな」
「それね!まさか阿僧さんがうぱおコラボの発案者だったなんて、びっくりしたよ!
しかも阿僧さんもかなりのうぱおファンらしくてさ、ほら!連絡先交換しちゃった!」
「いつの間に……」
皇輝が席を外した時、さりげなく聞いてみたらかなりのファン、特にらっこパイセンが推しだということが判明。
アニメも欠かさずチェックしているということで、思わず連絡先を交換してしまった。
「うぱお語れる人いなかったからめっちゃ嬉し〜!」
「妃乃はほんと……」
「え、何?」
「いや、惚れ直した」
「っ!?」
私の目を見て、そんなにストレートに言えちゃうものなの……?
皇輝ってやっぱり、本当に私のこと好きってこと――?
今日一日だけで色んな皇輝の一面を知れた。
認めたくないけど、何度もキュンとしてしまっていた。