婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


何だかすごく嫌な予感がした。

私はすぐに自分のフロアに戻り、残りの仕事を確認する。
この分なら明日に回しても大丈夫そうだ。

朝少し早く出勤してもいいし、今日はもう帰ろう。


何故か心の中がずっとザワザワしていた。

歩に「これから家行ってもいい?」とLIMEした。
返事はなかった。


歩、今どこにいるの……?

歩の家の合鍵はもらっているので、それを使って部屋に入った。
玄関に入った瞬間、血の気が引いた。

……女物の靴がある。


――嘘だよね?何かの間違いだよね?

歩に限って、そんなことないよね……?

だって私たち、結婚するんだもんね……?


どこか覚束ない足で歩の部屋に一歩、また一歩と近づく。
私の思い過ごしであって欲しいと祈りながら、扉を開けた。


――そこには、生まれたままの姿で別の女と抱き合う歩がいた。



「……歩?何してるの?」

「――っ!?妃乃!?」


慌てたような歩が振り返った瞬間、女の顔が見えた。

私は目を疑ったし、目眩がするかと思った。



「なん、で…塔子ちゃんが……」



婚約者と後輩が、浮気していた。



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