婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。
……本当は気づいてる。
私は多分皇輝に惹かれてる。
皇輝が私を大事に想ってくれていることもわかってる。
でも、この手を取れないでいるのは――怖いから。
そう、私は怖いんだ。
「……っ、」
「妃乃……?なんで泣いて…」
「だって、弟のままなら…ずっと一緒にいられる……っ」
皇輝は黙って私の話を聞いていた。
「自信がないの……だって、皇輝のこと失いたくない。
姉弟のままなら、変わらないでいられる。
皇輝に…嫌われたくないの……っ」
皇輝のことまで失いたくない。
皇輝にまで嫌われたら、私はもう――。
「怖いの……離れていくかもしれないのが……」
永遠の愛なんてなかった。
一度は信じた相手に裏切られた私には、どうしても踏み出す勇気がない。
もしまたダメになった時、「弟」まで同時に失うことになる。
そんなの、絶対に嫌……怖い……。
「バーカ」
「!?」
グスグス泣く私に向かって、呆れ返ったように溜息をついた。
「何もわかってねぇな…なんで俺がわざわざ偽装結婚なんて言い出したと思ってんだよ」
そう言って私の薬指から指輪を外す。
「こいつは飾りじゃねぇぞ」
外した指輪をもう一度薬指にはめた。
そして、手の甲にキスを落とす。
「あわよくば、があるからに決まってるだろ」