フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜


 ーー私の匂いが好みって、どういう意味? 今夜一晩だけってことは、つまり……。

 酔い潰れた穂乃香をこのホテルに連れ込んだのも、身体が目当てだったに違いない。

 酔っていたはずの頭が瞬時に覚醒し導き出した答えに、真っ青になった穂乃香はすっくと立ち上がる。そうして男の前を素通りして部屋から立ち去ろうとして、突然目の前がぐにゃりと歪んだ。

 ーーあっ、ヤバい!

 そう思った時には、バーでの二の舞を演じる羽目になってしまっていた。

 結果として、穂乃香が再び目を覚ました頃には外が白みかけていた。そうして隣には、水も滴るいい男から変態へと格下げした全裸の男の姿があり、記憶がないながらも昨夜の出来事が夢ではなかったのだと思い知る。

 それも束の間、裸の男同様何も身に纏っていない自身のあられもない姿にショックを隠しきれぬまま、ベッドの下に散らばった服を掻き集め素早く着替えると、逃げるようにして部屋を後にした。

 エントランスまで辿り着くと、ちょうどいい具合にたった今客が降車したばかりのタクシーへと乗り込んだ。

 運転手に行き先を告げてシートに深く身を沈めた穂乃香は、二日酔いで痛む頭と沈んでしまいそうになる気持ちとを少しでも紛らわすため手でこめかみを押さえて瞼を閉ざす。

 そして、もう二度と、男なんて絶対に信用してなるものかーーそう心に固く誓ったのだった。

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