フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
ーーこれからは仕事に生きるって決めたんだし、スキルを磨くためにも目一杯頑張るぞ!
気合いも充分だったはずが、いざ社屋を前にすると途端に足が竦んでしまう。
今日が出勤初日である穂乃香にとっては、あたかも敵地に踏み入るような心地だ。
怖じ気づいてしまいそうになる己を鼓舞するため、今一度両手でパチンと頬を挟むように叩くと、もう振り返ることなく社屋へと足を踏み入れた。
***
「ーーでは、秘書室にご案内しますね」
「はい。よろしくお願い致します」
人事担当から諸々の説明を受けた穂乃香は、配属先である秘書室へと赴こうとしているところだ。
緊張の面持ちで深々と頭を下げる穂乃香のことを人事担当の竹本が優しい声で気遣ってくれる。
「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。社長秘書の柳本 《やぎもと》さんから、葛城さんのことは大変優秀な方だと伺っております。すぐに慣れますよ」
「……あ、ありがとうございます」